
| 開催日時 | 2026年7月11日 (土) 14:00〜15:30 |
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| 場所 | スタジオ3 |
| ゲスト | 田中 奈津子、本間 メイ |
| 司会進行 | 宮本初音 (ART BASE 88 @**artbase88_fukuoka** ) |
| 内容 | Artist Cafe Fukuokaでは、子育て中および子育てを終えたアート関連の職に携わる方々による座談会を開催。ゲストに母親として、また美術家として活動する田中奈津子氏を迎えるほか、子育てアーティストのインタビュー集を制作している本間メイ氏もオンラインにて登壇し、子育てと創作活動を両立する中での悩みや気づき、経験談を共有する時間となりました。 |
7月11日、Artist Cafe Fukuokaにてトークイベント「アートと子育ての現在地とこれから」を開催しました。本企画は、福岡を拠点にインディペンデントアートオフィス兼オルタナティブスペース「ArtHouse88」を運営する宮本初音氏のご紹介をきっかけに実現したものです。当日は現地とオンラインを合わせて31名の方にご参加いただき、アーティスト、キュレーター、デザイナー、文化関係者、子育て中の方など、多様な立場の参加者が集まりました。
今回は、お子さま連れでも安心して参加できる場を目指し、ゲストの田中奈津子氏が子ども向けの造形あそびの素材をご用意くださいました。子どもたちは会場で自由に遊びながら、保護者の皆さんは安心して座談会に参加することができる空間となりました。

今回のゲストには、インドネシアと北九州を拠点に活動するアーティスト・田中奈津子氏と、インドネシア・バンドンを拠点に活動し、「一人一人の子育てプロジェクト」として子育て中のアーティストへのインタビューを続ける本間メイ氏(オンライン登壇)をお迎えしました。
母親であり美術家でもあるお二人が、ご自身の実践をもとに、子育てと創作活動をどのように両立してきたのか、また、その中で感じた悩みや気づき、各国の制度や文化の違いなどについて、それぞれの経験を交えながらお話しくださいました。

田中氏は、北九州から京都で美術を学び、2020年よりインドネシアへ拠点を移しました。コロナ禍には自宅や隔離ホテルを展示空間として活用したオンライン展示を実践したほか、ジャカルタでのフードスクールで魚をテーマにしたワークショップや、海洋ごみを素材にした子ども向けワークショップ、自然に還る素材を用いた「ライスペインティング」など、地域や環境との関わりを大切にしたプロジェクトを紹介しました。現在はバティック制作にも取り組み、その土地での出会いやコラボレーションから活動が広がっていく自身の制作スタイルについて語りました。
田中氏は、「作品の隣におむつが置かれているような光景こそ、母親でありアーティストでもある自分の現実です」と語り、子育てと制作を切り離すのではなく、その両方を含めて自身の表現や活動として捉えていることを紹介しました。
また、インドネシアでは展覧会やアートスペースが子ども連れに寛容であり、スタッフやアーティストが子どもを連れて活動することも珍しくないと説明しました。さらに、地域コミュニティの中で互いに子どもを預け合いながら創作活動を続ける文化が根付いていることにも触れ、日本との社会的・文化的な違いを紹介しました。

本間氏は、フェミニズムやジェンダー、リプロダクティブ・ヘルス/ライツをテーマに、映像、写真、インスタレーション、刺繍など多様な表現を展開しています。母乳から幹細胞を培養する実験や、妊娠中の身体の変化を刺繍で表現した作品などを紹介するとともに、2024年に40代で出産を経験したことをきっかけに、授乳の合間に始めたバティック制作や、子育てとリサーチ・制作活動を一体化させる実践についても共有しました。
また、本間氏ご自身もプロジェクトメンバーの一人として参加しており「子育てするアーティストを排除しないために:文化施設やレジデンスのためのガイドライン」を紹介しました。このガイドラインは、イギリス在住の美術批評家Hettie Judah氏を中心に、子育て中のアーティストたちが協働で執筆したものです。さらに、このガイドラインの策定をきっかけに始まった関連プロジェクト「子育てアーティストの声をきく」では、日本で子育てをしながら創作活動を続けるアーティストへのインタビューを継続的に行っており、本間さんはその活動を通して見えてきた多様な経験や課題についても紹介しました。

後半のフロアディスカッションでは、参加者それぞれの経験を交えながら活発な意見交換が行われました。
「妊娠・出産をキャリアのブランクとして考えない」という視点に共感する声がある一方で、「子どもを産むとアーティストとしての活動は止まる」と過去に言われた経験から、子育てを隠しながら活動してきたという切実な経験も共有されました。また、絵画制作は制作時間を細かく分けやすく、子どもと過ごす時間との調整が比較的しやすいことや、発表時期を柔軟に調整する工夫など、実践的な知見も語られました。
レジデンスプログラムについても議論が及び、現在一般的な3か月程度の滞在は子育て世代には参加が難しいという現状が共有されました。1か月程度の短期滞在や夏休みに合わせたプログラム、あるいは家族ごと移住する長期滞在など、多様な形式が求められていることが指摘されました。また、募集要項に子どもの同行について明記されていなくても諦めずに主催者へ相談することや、受け入れ側がガイドラインを整備することの重要性についても意見が交わされました。
さらに、日本、インドネシア、ドイツ、フィンランドなど各国の制度や文化の違いも紹介されました。インドネシアでは社会保障は限定的である一方、子どもを連れて活動することへの社会的な寛容さがあり、コミュニティによる支え合いが根付いています。ドイツやフィンランドでは、公的な育児支援制度やアーティスト支援制度を活用しながら活動を継続できる環境が整っている一方、日本では制度があっても利用しづらく、家族や個人の努力に頼らざるを得ない現状も共有されました。